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孫策  伯符
sonsaku-hakuhu

孫策ノ巻第四章  〜全ての始点〜



何もできない自分にただ嘆く。
江東の虎、孫堅の息子である孫策が、そんなはずはない。
袁術旗下で、孫策はしっかりと、着実に力を蓄えた。
袁術の命を忠実に遂行し、驚くべき戦果を挙げていた。
全ては父の意志を継ぎ、父の夢を自分が果たすために。
しかし、袁術は亡き孫堅の面影がしっかりと残る孫策を恐れていた。
いつか俺はこの男に殺られるかもしれない。袁術はそう思い、
孫策には決して力を与えなかった。そして、その範囲で孫策を有効活用した。

だが、そこは孫策の弁舌で袁術を説得し、
一度は解散された父の精兵たちを、孫策は返還して貰った。
たが、驚くべきことにその数は千兵ほど。
実に小心者の袁術らしいやり方だ。孫策が続々と戦果を挙げる中、
報酬が何も無しだとまずい。だったら孫策の要求を呑むが、
それだけでは、どうしようもない程度の兵の数ならどうだろう。
厄介な問題を解決しつつ、恐れるべき孫策は制御する。
だが、しっかりとその袁術の小細工は裏目に出てしまう。

よく考えて見てみると、袁術が孫策に返還した兵の数は千。
一体、千の兵で何ができよう。しかし、ただの千じゃない。
当時の天下では最強を誇った孫堅の兵である。
孫堅が息子に託した、最期の希望でもある。
孫策は父の兵、千を元手に天下へと乗り出す決心をした。

一度は途絶えた孫家の天下取りが、再開した瞬間でもあった。