トップページ -  呉史伝記-孫策ノ巻  第十二章



孫策  伯符
sonsaku-hakuhu

孫策ノ巻第十二章  〜好敵手〜



孫策は雑用を人に任せるのが嫌いで、自ら敵地に偵察へ行っていた。
大将と言うのは、陣の奥に深く腰を据えて戦場に権謀術数を巡らすものである。
その大将が自ら偵察しに敵陣に赴くなど、持っての他であって、
もしも発見されたら、生きては帰れないであろう。

偵察など部下に任せれば良いものを、孫策は前途した理由で、自ら行った。
更に、少数の共しかつけいなかった。無謀過ぎる・・・

しかも運悪く太史慈という敵将に遭遇。
この太史慈と言う男、義理人情に厚く、江東でも一、二を争う名将である。
孫策と太史慈。後に、好敵手であり主従の絆を結ぶ、なんとも奇妙な関係を築く。
二人の初対面は、孫策の軽はずみな行動から生じたものでもあった。
太史慈は孫策を見つけると、孫策に一騎討ちを仕掛けた。
演義などでは、一騎討ちは戦の華として、頻繁に描かれている。
しかし、勝利か敗北かの二つに一つの結果しかでない勝負に、
そして勝負の一瞬の刹那に全てを賭けるような、無謀な将は少なく、
一騎討ちを大将が許可する場合も少なく、正史では極まれにしか起こらない。
更に言ってしまえば、稀代の大将と稀代の名将の一騎討ちと言えば、
孫策と太史慈の一騎討ちだけ、と言っても良い。

つまり、三国志で最も華のある一騎討ちが始まった。

天命はどちらかにしか味方しない。そう、強い者に天命は味方するのだ。
さて、天命が味方をするのは何れであるか・・・