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孫策  伯符
sonsaku-hakuhu

孫策ノ巻第十章  〜孫策戦死〜



「孫策が流れ矢に当たって戦死した」
軍が壊滅し、牛渚からの援軍を待つつもりであったが、
その牛渚の軍も壊滅。絶望な状態にあった秣陵の残党軍に入ってきた情報である。
にわかに信じ難い話だが、孫策の父、孫堅は単独行動を好み、それが祟って落命。
孫策にしても、常に軍の先頭に立って軍を引っ張っていくような人間であった。
慎重さに欠ける孫策のことだから、ありえない話でもない。
残党軍の一人、于茲が勇んで退却する孫策軍に突撃してきた。
脆い。一瞬にして三つの軍を壊滅させた孫策の軍も、主を失えば、こんなもんだ。
于茲は、反撃すらしてこない孫策軍を、とことん壊滅させる気であった。
しかし、于茲は一つ、大きな誤算をしていた。

そう、それは孫策が自らの死をも利用してくる曲者だと言うことだ。
孫策の死は虚報で、于茲が攻撃していたのは囮の軍。
何時の間にか、于茲の背後に孫策の正規軍が現れ、たちまち于茲の軍を殲滅した。
自らの死をも利用してくる男と戦えるような者が、
残党軍に、それもたかだか劉ヨウの一端の残党軍にいたであろうか。
夜のうちに逃走兵が続出。逃亡に失敗した者が高い柵を作って堀を深くし、
完全に陣に篭っているだけになった。


何もしてこないのなら、放置しても問題ない。
無駄な時間を過ごすのを嫌う孫策は、残党軍をそのまま放置。
劉ヨウの本拠地、曲阿へ軍を向けた。