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甘寧  興覇
sonken-bundai

甘寧ノ巻第九章  〜濡須口の激戦(前夜)〜



孫権は中原への侵攻の糸口として、魏の合肥へ攻め込むことを決定した。
大軍を擁して仕掛けた戦だが、魏将張遼の奇襲により、孫権の出鼻は挫かれた。
更に張遼の奇襲が凄まじいもので、孫権は乱戦の中で危うく死ぬところであった。
現在の戦況は、孫権軍がやや劣勢である。劣勢を覆すために、
得意の水軍で攻撃を掛けようとするも、戦う前に水軍の将の董襲が、
船から落ちて溺死した。水軍きっての董襲の死は、軍の士気に多いに影響した。
ここで孫権は、この劣勢を覆すために甘寧に出陣を命じた。

甘寧は出陣前夜、百の精兵を選りすぐった。ただの百人で敵陣に突撃するという。
敵将には張遼があり、勿論大軍である。百では話にならない。
関羽の時もそうであったが、甘寧は大軍を相手にする時は、
異常に少ない兵で戦うのが甘寧流の戦のようだ。
言うまでも無く、その無謀な攻撃に意義を挟む者がいた。
それどころか、満場一致で甘寧の無謀の攻撃に反対。
しかし、孫権は甘寧の自信満々の態度を信じた。甘寧が自信満々の時は、
大抵ことが成す。孫権もそれを良く知っている。
魏の大軍に、黙殺されても仕方がない程少数で攻撃を仕掛けるという、
みすみす功臣を殺すような進言を用いた孫権は、やはり度量というものが凄い。


出陣前夜の濡須口には、夜陰に紛れて刻々と動く影があった・・・