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甘寧  興覇
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甘寧ノ巻第三章  〜弓取り甘寧〜



迫り来る屈強な軍に、甘寧は弓を取って戦った。
凌操は黄祖の喉元にまで迫ったのだが、甘寧の必死の奮闘により、進軍を停止。
そして、前線に出ていた凌操を甘寧が持ち前の弓術で射殺した。
将を失った兵は、先までの勢いを失って、黄祖の追撃を中断した。
甘寧の大活躍により、九死に一生を得た黄祖なのだが、
一向に甘寧を厚遇しようとしなかった。どれだけ実力があれども、
過去に無頼の徒だったという理由で重用しないのは、乱世における黄祖の、
器量の足りなさの証拠でもあった。
孫権やその兄孫策、乱世の奸雄曹操など、
歴史に勇名を刻んだ人物は、実力がある者は、その過去には関わらず重要した。
国とは人が創るものでもあり、その人を選ぶのが君主である。
有能な人を選べるか、否か。それで有能な君主であるか否かも決まる。

やはり甘寧が仕えるべき君主は、黄祖ではなかった。
毎日恵まれない日々を送り、それだけならまだしも、
甘寧の古くからの仲間を、黄祖は金で手懐けて自らの配下にしだした。
命の恩人から配下を奪うのだから、黄祖の無能さといったら大したものだ。
よき君主に恵まれず、仲間の数も日々減ってゆく。
甘寧は日々嘆くばかりであった。


世の宝を生かすも腐らすも、それは世の人次第で、
甘寧の運命も今、世の人に託された。